Q&A

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長い時間スマートホンを使い続けると、近視は悪化するのでしょうか?

近視が悪化する可能性は十分に考えられます。

一般的に近視などの屈折異常が進行するのは20歳代前半までとされてきましたが、現代では大人になってからも近視が悪化する人が増えています。背景にはスマートホンをはじめとするパソコン、タブレット、ゲーム機などのデジタル機器の普及と、それを日常的に使うVDT(visual display termina)作業の増加が影響しているという見方が定着しつつあります。

とりわけコロナウイルス感染症が流行して以降、子どもたちは室内でスマートホンやゲーム機を使用する時間が長くなっているようです。視力の低下を感じたら眼科を受診するのが最も確実な解決への近道ですが、日常生活で心がけたい注意点をご説明しましょう。

高校生の6割以上、中学生の半数以上が近視の時代

文部科学省が毎年、子どもたちの発育や健康の状態を明らかにするために行う実施する「学校保健統計調査」では、幼児・児童・生徒それぞれの視力に関する調査も行っています。

最新の令和元年度版によれば、裸眼視力が1.0未満の割合は幼稚園児が26.06%、小学生が34.57%、中学生は57.47%、高校生は67.64%にのぼり、いずれも過去最高の数字でした。スマートホンが普及し始めた平成21年度は幼稚園児24.87%、小学生29.71%、中学生52.54%、高校生59.37%でしたから、この10年間で子どもたち視力が急速に低下したことがわかります。

世界的に見ても、近視の増加は問題視されています。近視の人は将来、緑内障や網膜剥離など、深刻な視力障害につながりかねない眼疾患にかかるリスクが高いと、いろいろな疫学調査で明らかになってきたからです。

では具体的にスマートホンの何が視力に悪影響を及ぼしているかというと、実は詳しい因果関係はまだよくわかっていません。たとえば「スマートホンの放出するブルーライトが視力の低下を招く」といわれた時期がありますが、近年の研究では「ブルーライトが人体に及ぼす悪影響は断定できない」という説が主流になっています。

視力の低下に限らず、ブルーライトが眼の病気を誘発するかどうかは、現時点でははっきりした結論が出ていないのが実状です。

しかし一方で、はっきりしていることもあります。
それは「近い距離のものを見る作業(近業)が続くと、近視になる確率が高まる」ということ、また「長時間、同じ距離のものを見続けると、視力低下やドライアイ、眼精疲労を招きやすい」ということです。

同じ距離のものを長時間じっと見る習慣が弊害に

「スマートホン老眼」という言葉をご存じでしょうか。スマートホンや携帯ゲーム機などを長時間にわたって使い続けた結果、見る対象にうまくピント(焦点)を合わせられなくなる現象を指します。
もちろん医学的に正式な病名ではありませんが、症状が老眼に似ていることを表すキャッチ―な命名といえるのではないでしょうか。

眼のピント調節機能は、主に角膜と水晶体が司っています。なかでも水晶体はカメラでいえばレンズにあたる部分で、周縁を囲む毛様体筋という筋肉が伸びたり縮んだりしてレンズの厚みを変えることにより、見る対象にうまくピントが合うよう調整しています。老眼はこの毛様体筋が加齢によって硬くなり、ピント調節がスムーズにできなくなった状態です。

スマートホン老眼も、眼から同じ距離にあるスマートホンをじっと凝視したせいで毛様体筋が凝り固まり、一時的にピント調節機能が働かなくなったと考えられます。

視力低下の症状が一時的なものであるうちはいいのですが、万一この状態が慢性化するとしたら、老眼になる年齢が大幅に下がる危険性も懸念されます。ほとんどの人がスマートホンを頻繁に使う時代になってからまだ日が浅く、それが長期的に見て眼や人体にどのような影響をもたらすか、科学による確実な立証の成果が待たれるところです。

眼の健康を守るためにスマートホン使用で注意したいこと

したがって現時点では、気をつけていただきたい「スマートホンとの上手なつき合い方」としては次のようなポイントが挙げられます。

視力低下の予防

◆スマートホンと眼の距離を、少なくとも30cm以上は離す
◆少なくとも30分に1回の頻度でスマートホンから眼を転じ、1分間ほど遠くを見る
◆スマートホンを使うときは、できるだけ周囲も明るい環境で
◆文字の大きさや、画面の明るさ・色合いを、自分の眼が疲れにくい状態に設定する
◆寝転がったりして、左右の眼からの距離に差があるような状態で画面を見ない

ドライアイと眼精疲労の予防

◆画面に集中してまばたきの回数が減らないように注意する
◆眼が疲れたときは、閉じたまぶたの上に蒸しタオルをのせて1分間ほど休む

近視は、遺伝要因と環境要因の両方が関与しているといわれます。どちらの要因がどの程度の影響を与えているかを科学的に判断する方法はありませんが、子どもたちのみならず大人まで近視が進行する現代は、以前に比べて視力を低下させる環境要因がはるかに多くなったことを物語っています。

しかし、スマートホンの使用が当たり前になったライフスタイルを元に戻すことは不可能に近いでしょう。

「人生100年時代」といわれる今日、健康でよく見える眼を生涯にわたって維持するために、日常のちょっとした心配りの積み重ねで自衛する習慣を身につけることが大切です。

【まとめ】
◆子どもだけでなく、成長期を過ぎた大人にも近視が急増して世界的な問題になっている。
◆スマートホンなどデジタル機器が近視に悪影響を与える科学的根拠はいまだ解明中。
◆はっきりしているのは長時間、近距離の同じものをじっと見続けると近視になりやすいこと。休憩時間を入れる、意識的にまばたきをするなどの習慣で自衛を。